「離婚届の提出と同時にできる手続きは何?」
「離婚届を出した後にする手続きはある?」
市役所に離婚届を提出することで離婚が成立します。
しかし、離婚届を出しただけでは離婚は終わりません。
自身が離婚後の生活で不自由なく過ごすためにも、公的な手続きや自身が損しない為に
離婚相手と話し合って決めることがあります。
本記事では、離婚届の提出と同時にできる手続き9選と、離婚届を出したあとにすべき手続きや離婚前にすべき準備と注意点について解説します。
- 離婚届と同時にできる手続き9つ
- 離婚後に役所でできる手続きと優先順位(順番)
- 離婚届と転出届けはどちらが先?
- 離婚後に住所変更しないとどうなる?
- 離婚届を出した後に別途手続きが必要なもの
- 離婚届を出す前にできる手続き・準備と注意点
- まとめ:準備を進めて離婚届と同時に手続きをスムーズに進めましょう
離婚届と同時にできる手続き9つ
離婚届と同時にできる手続きは以下の通りです。
- 親権者を決める手続き
- 新しい戸籍を作る手続き
- 婚氏続姓の手続き
- 住民票の異動届
- 転居届
- 世帯主変更届
- 印鑑登録
- マイナンバーカードの変更手続き
- 運転免許証・パスポートの変更手続き
離婚手続きは市役所の窓口で行います。
その時に、同時に別の手続きも進めることができるため、知っておけば離婚時の手続きがスムーズに進みます。
また、同時にできるとは言っても別の窓口での手続きが必要になるものもあるため、事前に知っておく必要があります。
・親権者を決める手続き
離婚する時に未成年(18歳未満)の子どもがいる場合、親権者を父・母のいずれかに指定しないと離婚することができません。
親権者の決め方は、夫婦間での話し合いが基本となります。
折り合いがつかない場合は、調停・審判・裁判などを通じて法的処置に則って親権者がきまります。
手続きといっても、離婚届の「未成年の子の氏名」の欄に、夫か妻のどちらかに息子の名前を記入すれば手続きは完了します。
しかし、離婚によって親権者が変わる場合、家庭裁判所の調停・審判が必ず必要となり、親権者変更調停申立書などの書類を準備する必要があります。
調停を通じて親権者が決まった場合は「調停調書謄本」。審判の場合は調停調書謄本と「確定証明書」を受け取り、10日以内に市村長役場に提出する必要があります。
・新しい戸籍を作る手続き
結婚すれば夫婦のどちらかが戸籍に入ることなります。
離婚届を提出すれば、戸籍は元の戸籍に自動的に戻ります。
しかし、元の戸籍に戻らず新しい戸籍を作ることも可能で、その場合には「新戸籍編成」という申し出を行えます。
こちらも、離婚届の「婚姻前の氏に戻る者の本籍」の欄にチェックを入れるだけで、新しい戸籍を作ることができます。
・離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続姓)
離婚届を出せば自動的に結婚前の旧姓に戻ります。
しかし、仕事などで名前を変えられない事情がある場合「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出することで、婚姻時の名前のまま過ごすことが可能です。
第七十七条の二 民法第七百六十七条第二項(同法第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定によつて離婚の際に称していた氏を称しようとする者は、離婚の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
(引用:戸籍法 | e-Gov法令検索)
この手続きは、離婚届を提出した日から3ヶ月以内に行わなければいけません。
届け出は本籍地、住所地または所在地の市区町村役場に提出します。
・住民票の異動届(同じ市区町村での引っ越し)
離婚して住所が変わる場合、同じ市区町村か別の市区町村の2つのパターンに分かれます。同じ市区町村内で引っ越す場合は、「異動届」の提出が必要になります。
・本人確認書類(運転免許証など)
・転居届(別の市区町村への引っ越し)
離婚後に実家に帰ったり、婚姻期間中の市区町村とは別の場所へ引っ越す場合は「転居届」の提出手続きが必要になります。
転居届を出す流れは以下の通りです。
②転出証明書を受け取る
③転出証明書・印鑑・本人確認書類を持って
引っ越し先の役場で14日以内に転入届を提出する
・世帯主変更届
持ち家・マンションを購入し、離婚によって夫名義の家に妻が住み続ける場合、世帯主変更届を提出して、名義を妻のものにしなければいけません。
こちらも役所の窓口で手続きが可能で、印鑑・本人確認書類・住民異動届をもって手続きを受けます。
なお、世帯が妻1人になる場合はこの手続きは不要です。
・印鑑登録
印鑑登録をしている場合、離婚届を出した後は印鑑登録の変更が必要です。
しかし、印鑑登録は必ずしないといけないものではないため、離婚後に印鑑登録をしない場合は、印鑑登録を削除するだけで構いません。
印鑑登録・削除は役所の窓口で行えます。
なお、名字が変わる人が別の市区町村に引っ越す場合、現在の印鑑登録は自動的に削除されます。よって、新しい居住地の市区町村役場で新たに印鑑登録を行えばよくなります。
・マイナンバーカードの変更手続き
離婚届を提出すれば、自身の持つ本人確認書類の情報を更新する必要もあります。
その中で、マイナンバーカードは離婚届と同時に変更手続きが行えます。
名字が変わる・住所が変わるなどの変更は役所の窓口で書き換えが可能です。
手続きには印鑑・運転免許証が必要です。
・運転免許証の氏名や住所の変更
離婚届と同時にできる手続きとして、運転免許証の変更手続きも挙げられます。
住所地を管轄する運転免許センター・運転免許試験場・警察署で手続きが可能です。
・本籍が記載された住民票の写し
・運転免許証記載事項変更届(窓口にある)
離婚後に役所でできる手続きと優先順位(順番)
離婚届を提出し離婚が成立後に、そのまま役所でできる手続きや申請があります。
「優先順位や分からない」という人の為にも、やることのチェックリストを順番でまとめました。
- 国民健康保険の加入手続き【早急に】
- 国民年金の変更手続き
- 児童扶養手当の新生
- ひとり親家庭の医療費助成
- 母子家庭の住宅手当・補助
- 就学援助
- JR通勤定期券の割引
- 養子離縁届
- 子どもに関する手続き
後述しますが、国民健康保険の加入手続きは離婚届を出した日から「14日以内」に行う必要のある手続きで、優先して手続きを進めなければいけません。
その他にも、離婚後にすべき手続きはありますが、国民健康保険のような数日以内にしなければいけないような手続きはありません。
しかし、手続きを後のばしにしていると後から損をする可能性があるため、離婚届をだしたあとにすぐに手続きすることがおすすめです。
・①国民健康保険の加入手続き(14日以内)
離婚後の手続きで最も優先順位の高いものの1つに、国民健康保険の加入手続きがあります。妻が夫の会社の健康保険に加入している場合、離婚すれば国民健康保険の加入資格を失います。
離婚届を出した14日以内に、市町村役場で国民健康保険の加入手続きを行う必要があります。
なお、離婚する前から自身の勤める会社の国民健康保険に入っている場合は、引き続き継続して加入することができます。しかし、名字や被扶養者に変更がある場合は、会社を通じて年金事務所に変更手続きの書類を提出する必要があります。
・②国民年金の変更手続き
国民健康保険と同様、夫の厚生年金に加入している場合、離婚すれば加入資格を失います。この場合も、市区町村役場で国民年金の変更手続きが必要です。
今まで夫の扶養に入っていた妻は、第3号被保険者から第1号被保険者への変更手続きが必要です。また、離婚後の厚生年金を分割する「年金分割」は、離婚後2年以内に手続きが必要です。
・③児童扶養手当(母子手当)
離婚後に親権者になった親は、児童扶養手当というひとり親家庭の生活を支援する給付を受けることができます。
この手当は、条件を満たすことで子が18歳になる3月31日まで給付を受けることができます。しかし、申請が遅れた場合でも遡って申請することはできません。
・④ひとり親家庭の医療費助成
離婚後に親権を持った親は、「ひとり親家庭医療費助成」という、ひとり親とその子、もしくは両親がいない子が、医療費の自己負担分の一部を自治体から助成してもらえる制度を利用することができます。
こちらも役所で手続きを行い、「助成資格証明書」を受け取ることができます。
・⑤母子家庭の住宅手当・家賃補助(自治体によって異なる)
都道府県や市区町村によって有無が異なりますが、母子家庭の世帯で住宅手当・家賃補助がもらえる地域もあります。
例えば、兵庫県神戸市には「神戸市:ひとり親世帯の家賃補助制度」があります。
家賃補助 | 最大15,000円/月 家賃債務保証料補助:最大6万円/月 |
---|---|
補助期間 | 最大6年間 ※子が18歳になる3月31日まで |
給付月 | 4月・8月・12月 |
しかし、全てのひとり親がもらえる訳ではなく、年収や住まいによって条件が異なるため、まずは自治体に制度があるかと、条件を確認しておくことが大切です。
・⑥就学援助
離婚後は就学援助も受けることができます。
各市村長が単独で行う制度
・⑦JR通勤定期券の割引手続き
離婚後に児童扶養手当を受給しているひとり親は、JRの通勤・通学定期券の割引を受けることができます。割引は3割です。
手続きは役所の窓口で行い、「特定者資格証明書」を受け取り、JRの窓口で提示しながら定期券を発行すれば完了します。
市区町村によっては、練馬区の「練馬区ひとり親家庭の割引や免除 」のように、JR以外の公共交通機関でも割引・免除を受けれる地域もあります。
・⑧養子縁組をしている場合は養子離縁届
養子縁組の親子で夫婦が離婚する場合、養子離縁届を出すことで養子縁組を解消することができます。
手続きには協議離縁・審判離縁・和解離縁・裁判離縁と離婚と同じような手続きにそって離縁を行います。
・⑨子どもに関する手続き
子どもに関する細かな手続きも進めなければいけません。
- 子の名字・住所の変更
- 子の健康保険・年金の手続き
- 健康保険証の手続き
- 児童手当の受取人の変更
- 保育所・幼稚園・学校の入園や転校手続き
など
離婚手続きと同時に役所でできる手続きもあれば、学校や幼稚園に電話して行う手続きがあり、新しい生活が始まることを考えればすぐに対処する必要があります。
離婚届と転出届けはどちらが先?
「離婚届と転出届はどちらが先にすべきこと?」
離婚と同時に引っ越しを考える場合、離婚届が先か転出届けが先か分からないという問題が口コミなどで見受けられます。
結論を述べると「離婚届を先に提出した方が手続きがスムーズ」です。
どちらが先という決まりはありませんが、一般的な流れは以下の通りです。
- 離婚届を役所に提出する
- 同じ役所で転出届を提出する
- 転出証明書を受け取る
- 新しい引っ越し先転入届を提出する
(転出証明書・印鑑・本人確認書類が必要)
離婚後に住所変更しないとどうなる?
離婚後に住所変更をしない場合、住民基本台帳法52条2項より、5万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
2 正当な理由がなくて第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出をしない者は、五万円以下の過料に処する。
(引用:住民基本台帳法 | e-Gov法令検索)
また、住民票を異動させないと入園や転校などもできない状態のままです。また、ひとり親で受けれるはずの手当てを受けられないなどのデメリットもあるため、離婚届を出した後はすぐに手続きを済ませることが重要です。
離婚届を出した後に別途手続きが必要なもの
離婚届を出した後に、役所で同時にはできないけど別途手続きが必要なものもあります。知っていれば先に準備を済ませてスムーズに離婚手続きができるようになります。
・離婚後に子どもを旧姓にする手続き
離婚届を出しただけでは、子どもの名字は婚姻時の名前のままで、親権者と子どもの名字は違ったままです。
そのため、「子どもを旧姓にする手続き」が必要になります。
居住地の家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」をすることで、子どもの名前を旧姓に戻します。
・子の戸籍謄本
・妻と夫の戸籍謄本
・収入印紙800円分
・郵便切手
問題なく審判が終われば、審判書謄本と確定証明書が発行されるため、役所で「氏の変更手続き」を済ませれば完了します。
・子どもを新しい戸籍に入れる手続き
妻が親権を持つ場合、離婚手続きが終わった後に子どもを新しい戸籍に入れる手続きも必要です。
新しい戸籍に入れるためには、妻が新たな戸籍を作ることと、名字を変更する許可が必要です。その後に役所で「入籍届」を提出すれば完了します。
・財産分与の手続き(法務局・金融機関など)
離婚後は、離婚前に話し合った内容をもとに財産分与の手続きも行っていく必要があります。
財産分与は,
(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配
(2)離婚後の生活保障
(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があると解されており,特に(1)が基本であると考えられています。
(引用:法務省:財産分与)
持ち家であれば売却したり、住み続けるのであれば、法務局に所有権移転登記を申請して名義変更を行ったり、不動産価格の半分を現金でもらうなど、あらゆる準備が必要です。
・年金分割の手続き(年金事務所など)
財産分与の1つに年金を半分に分ける「年金分割」も、離婚後2年以内に済ませる必要があり、「合意分割」と「3号分割」2つの年金分割の制度があります。
合意分割 | 3号分割 | |
---|---|---|
対象 | 共働き世帯 | 専業主婦世帯 |
合意 | 必要 | 不要 |
どちらのケースでも、分ける割合は基本1:1です。
話し合い自体は離婚前に行いますが、手続きは離婚後に近くの「年金事務所」や、「年金相談センター」に標準報酬改定請求書を提出しないと、年金分割の手続きは完了しません。
離婚届を出す前にできる手続き・準備と注意点
最後に、離婚届を出す前にできる手続きや準備と、大損しない為の注意点を紹介します。
離婚届を出すまでは辛い期間や、感情の起伏が激しくなりなかなか思うように離婚準備が進まないこともあります。
離婚届を出すまでの最も重要なコツは、「冷静に手続きを進めること」です。
損しない為にやるべきこと・考えるべきことを明確にして、メモに残しておく事で、離婚後に忘れていて後悔した、ということを防ぐことができます。
・市役所での手続きは平日のみ
前提として、離婚届を提出したり手続きを行う役所は平日しか受付していません。
仕事の都合で土日祝しか動けない場合は、職場に前もって伝えて休みを取って手続きに行きましょう。
・離婚後の生活の準備
離婚届を出す前に考えるべきことは離婚後の生活です。
- 離婚後の住まい
- 離婚後の生活
- 職場(就職するのか)
- 離婚後のお金
- 子どもの生活
- 周りに相談・助けてくれる人はいるか
特に、衣食住に関わる事やお金の問題は、離婚後にも頭を抱える問題になりがちです。
後述しますが、後悔しない為にも財産分与や慰謝料など、お金に困ることがないように準備と入念な話し合いが必要です。
・離婚時のお金の問題(財産分与・慰謝料・年金分割など)
離婚届を出す前には、お金の問題はきっちり決めておくことが大切です。
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
- 養育費
- 持ち家の財産分与
「早く離婚したい」という気持ちで、この話し合いを適当にしてしまうと、離婚後のお金に困って後から後悔してしまいます。
また、相手も離婚条件を良くしてくる可能性があるため、必ず真剣に考えて話がまとまらない場合は、家庭裁判所へ調停や裁判を使ってでも、きっちり決めておくことがおすすめです。
・養育費の金額はいくらなのか
親権を持つ場合は養育費も必ずしっかり決めておくことが重要です。
「毎月いくらもらえるのか」
「いつまで払い続けるのか」
この2点を決めた上で、昨今問題である養育費の不払いがないように「公正証書」に残しておくことをおすすめします。
なお、厚生労働省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、母子家庭・父子家庭でもらう養育費の相場は以下の通りです。
子の人数 | 母子家庭 | 父子家庭 |
---|---|---|
1人 | 38,207円 | 29,375円 |
2人 | 48,090円 | 32,222円 |
3人 | 57,739円 | 42,000円 |
4人 | 68,000円 | - |
平均 | 43,707円 | 32,550円 |
・子どもとの面会の有無・頻度など
親権を持たない方の親も、子どもに会いたいという人は多くいます。
離婚後に後悔しない為にも、面会はできるのか・頻度はどれくらいで会えるのかを決めておくことが重要です。
面会の有無を決めずに離婚してしまうと、離婚後に会いたくても二度と会えなくなってしまう可能性があります。
・持ち家の財産分与(誰が住むか・いくら払うのか・住宅ローンなど)
最後は持ち家の財産分与です。
持ち家を財産分与する方法は3つあります。
- 妻が住み続ける
- 夫が住み続ける
- 家を売却する
夫が住み続ける場合は、家の価格の半分を妻に現金で渡します。
妻が住み続ける場合は、名義変更をした上で妻がローンの残債を支払っていきます。
多くは売却したお金を半分にするケースですが、どのケースにおいても「家の価値」は非常に重要で高いほど損をしないです。
離婚後のお金で後悔しない為に、家の価格を一括査定サイトなどで調べておくことをおすすめします。
まとめ:準備を進めて離婚届と同時に手続きをスムーズに進めましょう
本記事では、離婚届と同時にできる手続きについて解説しました。
離婚は離婚届を出すだけではありません。
離婚届を出した後の手続きも必要ですし、離婚が成立するまでの間に準備を進めておくことも大切です。
特に離婚は準備が重要なので、後悔しない為にも入念に進めることが大切です。